農業集落調査の継続を求める声明
2022年10月30日
農業問題研究学会幹事会
2022年7月28日、農林水産省は2025年農林業センサス研究会の資料「2025年農林業センサスに向けた検討の方向性」で、「農業集落調査」を廃止することを提起しました。
私たち農業問題研究学会及び本学会員は、農業及び農村の発展に資する研究活動に際し、農林業センサスを積極的に活用してきました。そのため、本学会では農林業センサスの重要なピースである「農業集落調査」を廃止する方針に以下の点から反対します。
1、本学会と農林業センサス農業集落調査
本学会のこれまでの歩みは、農林業センサスなしには語れません。1957年に農業問題研究会として設立されてから(2000年、農業問題研究学会に改称)現在に至るまで、本学会では定期的に農林業センサス結果の分析を研究大会、及び『農業問題研究』誌で発表しています。こうした本学会の姿勢から、農林業センサスは実態調査分析とともに学会員の研究の中心的素材となっています。そのため、農家や農業法人等の動向や展望を分析・考察するために農林業センサスを利用する中で、当然のことではありますが、集落構造の在り方も常に意識されています。また、学会員による集落構造自体を中心テーマとした研究成果も多く発表されています。
2、地域実態研究と農林業センサス農業集落調査
地域調査活動における基礎的データとして、本学会ではその存在意義が確立されています。地域研究の伝統的な手法として地域実態調査があります。「農村の地域社会における最小の単位」である集落の調査研究においては、その当該集落の各種データを事前に調べることが第一歩となります。農家戸数や経営耕地面積の変化はもちろんのこと、「農業集落調査」によって情報収集された寄り合いの回数など農業集落の状況を把握することは、調査対象とする地域の事前検討に欠かせない作業です。現在、農林水産省が農林業センサス結果と各種情報を加工・再編成してデータ提供している「地域の農業を見て・知って・活かすDB」を利用する機会も増えています。当データベースの重要性を維持するためにも、「農業集落調査」の実施により収集した個別の集落情報が必要です。
以上のように、本学会の研究活動において、「農業集落調査」によって収集されたデータは必要不可欠なものです。今回の「農業集落調査」廃止の方針に、本学会はきわめて強い関心を持って注視しています。また、これから集落の調査研究を行う研究者にとって、この調査データを通じて得られるものが大きいことに疑いはありません。これまで「農業集落調査」が積み重ねてきたデータという資源の社会的・学術的価値は計り知れないものがあります。廃止することは、それを自ら手放してしまうことにつながりかねないと考えます。
あらためて、本学会では「農業集落調査」の廃止に反対し、調査の継続及びそれが全数調査であることをここに強く求めます。
以上
PDFファイル:「農業集落調査の継続を求める声明」(2022年10月30日)